学びの糸を紡ぐ

自分なりになにかを身に着けていく過程をまとめたり、記録しておきたい心情を残したり。

首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』を読んだ

どんな本?

  • 首都圏の主要路線を色々な切り口で格付けし、順位を出している本。また、鉄道の大正時代くらいの歴史についても書いてある。

ピックアップメモ

  • 箕面有馬電気鉄道(現・阪急電鉄)の総帥だった小林一三が、沿線開発のビジネスモデルを築いた(1910年代)。
    • 小林は、固定乗車客を増やすために大学の誘致を図ったり、ターミナル・デパートを設立して都心に向かう乗客の掘り起こしをおこなったり、都心から逆方向の終点にエンターテイメントの拠点(e.g. 宝塚)を設け逆方向の電車も満員にしたりした。プロ野球の球団を傘下に収めたのも初。
    • 一時期は6,7チームの親会社が鉄道会社という時代も合ったが、現在では阪神と西武の2チームだけ。
  • 東急の母体企業は、渋沢栄一が設立した田園調布株式会社不動産資本会社。
    • 文字通り田園調布を開発するために設立された会社。渋沢は田園調布に理想の都市を築くことを夢見たが、都心から離れていて交通の便が悪いため、鉄道員出身の五島慶太に鉄道を建設させた。
    • この事業は小林一三が顧問という形で進められたが、関西に拠点を置く小林が全面的に指揮をするのは難しかった。そのため、実務担当者として五島慶太に従事させた。
    • 強盗慶太とも呼ばれた五島は、その強引な手法で、東急に現在の京急小田急、京王、相鉄を加えた「大東急」と呼ばれる大勢力を築いた。(戦後解体された)
    • 小林の手法を真似て、五島も玉電百貨店や白木屋を傘下に収め、百貨店事業を本格化させていった。また、慶應義塾を日吉に誘致したり、東京府青山師範学校(後の東京学芸大学)、東京府立高等学校(後の東京都立大学)も誘致し、学園都市としての付加価値も高めていった。
      • 学芸大学」「都立大学」には現在は大学はない(移転した)が、学園都市のブランドを維持するため、駅名に入れ続けている。
  • 東急の五島慶太と並び「鉄道王」として名を馳せたのが、西武グループ創業者・堤康次郎。「ピストル堤」の異名をとった。

感想

  • データは面白みがあったが、その解釈は特に熱心に読まなくても自分でだいたい意味づけできるので、ざっくり読む感じになった。
  • 各路線の特徴がざっくりしれたのは良かった。格付け自体には特に関心はなかったが、自分が住んでいる路線についての記述を読んで悪い気はしなかった。
  • 特に面白かったのは、鉄道の近代の歴史だった。こういう歴史のもとで各鉄道会社へのイメージが作られてきたのだなぁ、というのはとても感慨深かった。
  • 新横浜のプリンスホテルの外壁に堤康次郎の次男である堤義明の名の入った定礎があり、「お、さすが西武グループ、ピストル堤の功績がこういうところにも残っているんだなぁ」みたいな気持ちになった。
堤義明の名を冠する定礎
堤義明の名を冠する定礎

from where?

  • 頻繁に使うがその過去や現在についてほとんど何も知らない鉄道というものについて、とっつきやすいところから情報を仕入れてみたいなと思って読むことにした。
    • 自分は全く鉄道オタクではないが、子供がプラレールトミカにハマっているのもあり、その魅力の一端に触れてみたいという思いがあった。

to where?

  • 同時に買った本、小川裕夫『鉄道「裏歴史」読本』も読む。