学びの糸を紡ぐ

自分なりになにかを身に着けていく過程をまとめたり、記録しておきたい心情を残したり。

米本和広『洗脳の楽園 ヤマギシ会という悲劇』を読んだ

どんな本?

対立や争いごとのない、金の要らない幸福な農村―ユートピア社会の実現をめざしたはずの共同体は、いかにして崩壊に至ったか。人間の脆さとノンフィクションの底力を証明した、色褪せぬ大宅賞候補作。

感想

  • 衝撃的な本だった。どんなホラー映画よりも恐ろしい現実が描かれている。
  • 読んでいると本当に心が落ち込んでくるので、読むときのコンディションには注意が必要。
    • 筆者の特講参加体験を通じて洗脳に至るプロセスを追体験している気持ちになり、自分も悪影響を受けているのではないかと不安になってくる。
    • 子供達のエピソードを読んでいると、涙が出そうになる。苦しみ逃げ出したい子供が親に助けを求めるが、親は洗脳されていてそのSOSに全く気付けないというのは本当に絶望的だ。
  • このような集団が今も存在しているということ、今まさにこの瞬間にも苦しんでいるヤマギシズム学園の子供がいるのだということに大きなショックを受けざるを得ない。

from where?

  • pha『人生の土台となる読書』で紹介されていて興味を持った。

longtime1116.hatenablog.com

  • かねてからカルト集団や洗脳の実態というものに興味があった。
  • 本ブログでも★5を付けている真木悠介『気流の鳴る音』でもヤマギシ会が紫陽花邑と対比的に紹介されていて、どんなもんなのか興味があった。
    • 個性を潰す "モチ" のヤマギシ会と、個が個としての形を保ったまた集う "ニギリメシ" の紫陽花邑・・・というような比較が見られ、"モチ" という比喩はヤマギシの研鑽スタイルを非常によく表しているように思う。
    • 『気流の鳴る音』が出版されたのが1977年、『洗脳の楽園』によるとヤマギシ会が資本主義が加速する日本の流れを受けて過激化していったのがオイルショック後の1973年以降ということで、見田宗介が特講を受けたのはちょうど転換期だったのかもしれない。
    • 下手に『気流の鳴る音』を読んで関心を持ってヤマギシ会に近づかないように注意が必要・・・。今読んだらだいぶ危うい表現が並んでいるようにも思う・・・。

to where?

  • 同じ作者の、『カルトの子』など。