学びの糸を紡ぐ

自分なりになにかを身に着けていく過程をまとめたり、記録しておきたい心情を残したり。

中島義道『哲学の教科書』を読んだ

どんな本?

  • 哲学は何の役にたつのか。哲学の問いとはどんなものか。哲学者とはどのような人々か。そもそも、哲学とは何か。みたいなことを平易な文章で伝えている本。

感想

  • 哲学と思想は違う、というのはなるほどなと思った。自分は確実に哲学者ではない。(この部分の思考の整理ができたので★4つとした)
    • 自分は、自分の人生を充実させることを目的として、生の指針となるような自分なりの思想をいかに築くかというところに強い関心がある。
    • したがって、以下のようなスタンスを取っている。そういった意味で哲学的でないと感じる。
      • ある程度前提を受け入れる。労苦を生み出さない前提は疑う必要がないので、昨日と今日と明日の自己の連続性など、深刻に悩まない。
      • 時代や文化に依存した問題にも関心を持つ。この今社会においてどう生きるべきか、とか。
      • 役に立つので科学も用いる。比較社会学の本を読んで現在の自分の価値観を相対化したりする(そこでは真の普遍性は求めていない)。
    • ただし、ひとりよがりになっては困るので、p120「哲学はあくまでも自分固有の人生に対する実感に忠実に、しかもあたかもそこに普遍性が成り立ちうるかのように、精確な言語によるコミュニケーションを求め続ける営み」とあるようなこのスタンスは自分も大切にしている。
  • p217あたりに「他人の痛みをわかりなさい」という要求の過酷さが書かれている。
    • これと同じことを自分も思っていて絶対にこういう表現はしまいと思っていたが、やはり同じようなことを考える人がいるのだなぁと嬉しくなった。
  • p241の文章、とても共感できる。オメガトライブキングダムの梶くんが車椅子の上で語っている言葉と近いものがある。
  • p301の純粋理性批判の読解の部分、めちゃくちゃ難しい・・・。確かに解説なしではまともに理解できる気がしない。背伸びして西洋哲学の本を適当に読むのはやめておこう。理解できずただ眺めた実績だけ獲得して悦に浸ってもしょうがないので・・・。
  • この作者の文章は本当に読みやすく、本当に自分で思っていることを書いてくれている感じがあり、引き込まれる。勢いよく書いているが一方で謙虚さもあり、他の本も読んでみたくなる。
    • もちろん、「うーん、ここはこう考えたらこうなるんじゃないか?」と反駁できる余地みたいなのものは感じるが、そういうことを考えながら読める点も含めて気持ち良い。

ピックアップメモ

  • p35 死刑囚の母への手紙。
    • これは本当に衝撃的。自分がもしその立場だったとしたら何を考え何を伝えるだろうか・・・。
  • p39 あたり 思想と哲学の違い。
    • 「哲学は誰でもどの時代でも真剣に考え抜けば同じ疑問に行き着くという信念のもとに、徹底的な懐疑を遂行すること」
    • 思想はいろいろなことを前提として受け入れ、そのもとで議論を展開する。
  • p60 ハイデガーも「死」を描いた優れた書として挙げている『イワンイリッチの死』
  • p87 (シュールレアリスムは、)哲学的にはきわめて軽率な態度です。
    • 私が手を上げることができることのほうがよっぽど驚くべきことなのですから。
    • 現実世界それ自体が驚くべきことであり、たとえようもないほどグロテスクだという自覚が足りない。
  • p106 宗教の目的は生きる労苦からの救済。
    • 施策や学問によって達せられるものではなく、広い意味での行為すなわち修業によって達成される。
    • 言語的コミュニケーションを最終的には拒否するところ、言語的コミュニケーションを最終的には信頼していないところに哲学との大きな差異を嗅ぎつけます。
  • p113 科学は客観性を求める。
    • p118 科学はこうして個物の個物性に正面から向き合わないのですが、私の人生の大問題は私というかけがえのない個物に関わることですから、究極的には科学に答えを求めることはできない
  • P120 哲学とはあくまでも自分固有の人生に対する実感に忠実に、しかもあたかもそこに普遍性が成り立ちうるかのように、精確な言語によるコミュニケーションを求め続ける営み
  • p241
    • 「哲学は何の役にもたちません。しかし、・・・社会に役だつこと以外の価値を教えてくれる。・・・本当に重要な問題・・・それは「生きておりまもなく死ぬ、そして再び生き返ることはない」というこの一点をごまかさずに凝視することです。そして、このどうすることもできない残酷さを冷や汗の出るほど実感し、誰も逃れられないこの理不尽な徹底的な不幸を自覚することです。ここに、「死者の目」が獲得されます。・・・それは・・・宇宙論的な目であり、・・・そうした目で見ると、夜の電車の中にすしづめになり家路を急ぐくたびれ果てたサラリーマンたちを、その上に揺らめく刺激的かつ下品な吊り広告を見ていると、すべてがガラス細工のようにもろくはかなく美しく見えてくるのです。」
    • 「哲学は「死」を宇宙論的な背景においてみつめることによって、この小さな地球上のそのまた小さな人間社会のみみっちい価値観の外に出る道を教えてくれます。そして、それは同時に本当の意味で私が自由になる道であり、不思議なことに自分自身に還る道なのです。」
  • p301 カントの純粋理性批判の読解。

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  • 第七章の参考文献がとても充実しているので、ここから色々読みたくなった。