学びの糸を紡ぐ

自分なりになにかを身に着けていく過程をまとめたり、記録しておきたい心情を残したり。

大澤真幸『戦後思想の到達点: 柄谷行人、自身を語る 見田宗介、自身を語る』を読んだ

感想

  • 見田宗介については大体主著は押さえていてわかっている、柄谷行人はさっぱり読んだことがない、という状況で読んだ。
  • その結果、見田宗介のパートは「なんて簡潔にまとまっているんだ!全体が一望できて素晴らしいし、内容もやはり感嘆ものだなぁ。でも全く読んだことがない人が読んで理解できるのだろうか?」みたいな印象を持った一方で、柄谷行人のパートは、「なんとなく雰囲気しか掴めないな・・・これ、わかる人にはわかるんだろうけど、ハイコンテクストすぎて自分には難しいな・・・」という印象を持った。
  • つまり、この本は入門書としても機能します的な表現がされているが、ある程度わかっている人がおさらいするのに最適な本、のように思えた。
  • 廣松の物象化論やモースの贈与論、創造の共同体のネーションの概念など、今まで自分が触れてきた(あるいは積読にしているもの・・・)が続々出てきた。学びの糸を紡げているなぁと嬉しく思った。
  • 柄谷行人の交換様式論を大まかに把握した上でもう一度読むと良さそう。特に大澤真幸パートの「交響するD」のところは、なんとなくお宝が眠っていそうな予感はする。自分ではまだ十分に理解できていないけれど。
  • ナショナリズム NHK100分de名著』や『マル激第1100回』でも感じたが、大澤真幸さんの文章/発言は本当にわかりやすく、読み手/聞き手としては本当に助けられる。

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ピックアップメモ

  • p117-p118

この著書の中で、価値は「主体の欲求をみたす、客体の性能」として定義され、その機能は、「意識的行為における選択の基準」だとされる。
価値の定義からわかるように、価値の類型の論理的な出発点は、欲求の直接的な充足と、それにともなう感情としての<快楽>である。だが、快楽原理は、二つのジレンマを内在している。第一に、現在の快をとると、それが未来の不快をよびおこすかもしれない。第二に、自己としての快は、他者にとっての不快かもしれない。つまり、価値判断には「時間的パースペクティブ」と「社会的パースペクティブ」という二つの次元がある。見田さんは次のように整理する。

(1)時間的パースペクティヴの次元において
  A <現在>の感情の迸るままに身を任せるべきか(感性本意で<美>が究極価値)
  B <未来>の諸結果にたいする顧慮からそれを抑制すべきか(理性本意で<真>が究極価値)
(2)社会的パースペクティヴの次元において
  α <自己>の利害のおもむくままに行為すべきか(<幸福>を究極価値とする欲求性向が支配的)
  β <社会>への諸結果にたいする顧慮からそれを抑制すべきか(<善>を究極価値とする規範意識が支配的)

さらに、これら二つの次元をかけあわせた四象限から、四つの基本的な価値基準が演繹される。A-αが快(苦)、B-αが利(害)、A-β愛(憎)が、B-βが正(邪)である。
たとえば、伝統的には、価値には真・善・美の三つがあると言われたりするわけだが、なぜ三つなのかよくわからない。『価値意識の理論』の四類型は、快楽原理に含まれる二つのジレンマから論理的に導出したものなので、四つであることに必然的な理由があることがわかる。
・・・
時間的次元はニヒリズムの問題に、社会的次元はエゴイズムの問題に、対応している。

今まで、「ニヒリズムとエゴイズムはそれぞれ『時間の比較社会学』と『自我の起源』で扱われているが、これら以外には乗り越えるべき壁はないのだろうか?」と疑問だったのだが、こういうことなら納得できる。
時間と空間(=社会)で分けて、空間の方を自己と他者(=社会)という風に分ければ MECE になるから、少なくともこの切り口においては「四つであることに必然的な理由がある」と言えるのか。
また、自分なりの思想を築いていくにはこうやってMECEに自分の課題を整理してそこから出発していくとうまくやれそう。大きなヒントを得られた。
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from where?

  • 見田さんからはかなりの影響を受けたが、影響をあまりにも強く受けすぎており、この見田社会学みたいなものとは別の切り口で世の中を捉える方法を探していた。が、どうやって探したもんか・・・という感じで困っていた。
  • そんななか調べていたらこの本を見つけ、近年柄谷行人氏はバーグルエン賞を受賞したことも知っており、いい機会だから読んでみたいなと思って買った。

to where?

  • 柄谷行人『世界共和国へ: 資本=ネーション=国家を超えて』
    • この本を先に読んだ方が平易で良いらしい、と本書にも書いてあったので読むことにする。
  • 柄谷行人『世界史の構造』
  • 柄谷行人憲法の無意識』
    • 憲法9条改正問題等、自分なりのしっかりした意見を持つに至っていないので、こういうテーマの本をとりあえず一冊読んでみたいと思った。
  • 見田宗介宮沢賢治: 存在の祭りの中へ』
    • p205で「後に残したいと思うのは、基本的には、この七つの仕事だけです。」と書かれていて、これだけまだ読めていない。
  • なんかカントとかヘーゲルとか、その辺りも触れていかないと柄谷行人の著作を理解するのは難しかったりしそうだな〜〜〜。
    • NHK100分de名著とかで見つけていってもいいかもしれない。
    • 大澤真幸社会学史』で社会学の全体感を把握するというのもやっておきたい。