学びの糸を紡ぐ

自分なりになにかを身に着けていく過程をまとめたり、記録しておきたい心情を残したり。

真木悠介『時間の比較社会学』を読んだ

どんな本?

  • 文化と社会によって異なる時間という概念に対する感覚と観念を比較検討している。
  • 特に、近代的自我に特有の時間意識とその構造的な矛盾を明瞭に指摘している。

感想とメモ

  • 最高に良かった。
  • 自分の時間に対する自明といってもよいほどの価値観を、根底から覆し相対化させてくれたという点で、自分にとって本当に意味のある読書となった。
    • 我々の時間に対する感覚は、1.不可逆性と2.無限に伸びる直線性のふたつを自明としているが、これは近代以後の社会に固有のものであり、異なった社会・文化では異なった感覚を持ちうる。
  • 正直難しくて理解できなかったところもあった。第二章と第四章のあたりは求められる教養水準が非常に高い。
  • 近代的自我に特有の時間意識とその構造的な矛盾について、懐古主義的ではない方法で乗り越えていく手がかりを与えてくれた。
  • 具体的な他者や自然と交響することを通じてコンサマトリーな現在を生きること、そして未来への関心を有限な具象性のうちに完結させることで、ニヒリズムに陥ることなく未来という概念を現在を豊饒化するのに役立てていくこと。これがこの本から自分なりに汲み取った、生きていく上での大切な心構え。
  • コンサマトリーな現在を生きるためには?
    • カントは「人間をいつも目的として扱い、単に手段として扱うな」と言ったが、時間に対しても同じことが言えるのだろう。「"今そのとき"をいつも目的として扱い、単に手段として扱うな」
    • ビジネスにおいては(本作においても貨幣との比較がなされていて自然に理解できるが、)手段の自己目的化はご法度であり、行為は無限に続く未来に対して永遠に手段化していく(そして虚無につながる)。コンサマトリーな現在を生きるためにはそれを逆転しなければならない。手段を徹底的に自己目的化していくこと、未来に発生する行為をより現在に近い地点のための手段とし、現在にむけて目的化していく。
    • それこそが、未来により現在を豊穣化するということなのではないか。
    • 例えば、読みたい本を毎日読み続けいくこととし、100冊の本を用意したとする。読みたい本を用意したので、常に現在はコンサマトリーなものとなる。さらに、まだ読まれていないこれらの本は将来読まれるはずなので、いつか来るその日を思って現在ワクワクすることができる。
      • すなわち、読みたい本を読み続けることでコンサマトリーな現在を生きられるし、その延長にある未来への期待が現在をより一層充足させてくれる。
    • 意識だけでなくこの例のような仕組みを構築していくことで、コンサマトリーな現在を生き続ける人生に転換していきたい。

from where?

  • 常に存在し続ける将来への不安。死ぬ間際への不安。Twitterで「アフリカのある民族には未来という概念がない」という感じのツイートを見つけ、未来という概念がなければ将来への不安というものも存在しないかもしれないと興味を持った。ネットで調べてみたらこの本に行き着いた。
  • この本の作者は、↓で紹介されている人と同一だったため、読んでみたいと感じた。 

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to where?

  • 気流の鳴る音を読んだ。↓の記事でも『時間の比較社会学』に言及している。

longtime1116.hatenablog.com

  • この作者の別の本。あとがきによると、『自我の起源』はこの本の延長線上にあるようだ。

longtime1116.hatenablog.com

  • その他この作者による本

longtime1116.hatenablog.com