学びの糸を紡ぐ

自分なりになにかを身に着けていく過程をまとめたり、記録しておきたい心情を残したり。

ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』を読んだ

どんな本?

  • 「国民」の概念を「想像の共同体」と捉え、それが(出版)資本主義以降人々の心のなかにいかにして生まれ世界に普及するに至ったかを論じている。

感想

  • NHK 100分de名著での大澤真幸氏のサマライズは本当によくできているなと思った。
    • あんなにわかりやすく、この本で言いたいことの決して小さくない部分について伝えられていて、すごい。
    • 事前にこれを読んでいなかったとして、『想像の共同体』をいきなり読んでいたらどうなっていたのだろうか・・・。どの程度理解できただろうか・・・。
    • 今後も NHK 100分de名著は読むと思うが、原著を読むのをサボってしまう可能性が高まったかもしれない・・・いや、読むけれど。
  • あまりにも国民感情というものが(他の多くの人もそうだと思うが)自分にとっては自明の感覚なので、文化的人造物であるということが信じられないほどだ。
    • しかもここ250年程度で育ってきた感情であることを考えると、人類の歴史を考えたときにとんでもなく最近生み出されたものだというのが衝撃。
  • こういう意識の大きな変容があるということを知ると、タイムスリップもののSFを読んだときに、こんな風に今と同じような感覚でコミュニケーション取れるのかな?と思ってしまう。逆に、そういう意識の違いをうまく描写している小説とかあったら読んでみたい。
  • タイやベトナム、スイス等の歴史はあまり知らないので、深く理解できた気がしていない。フランス革命アメリカ独立宣言の頃については既にちょっとだけ世界史の学習の中で触れていたので相対的に理解が深かったように思う。やはり世界史の学習は基礎として重要・・・!
  • 時間に対する感覚も出版資本主義後に変容しているというのが直感的には理解が難しいと感じた。
    • 均質で数直線的な感覚を時間に対して持つのが自明じゃないというのは本当に不思議。

メモ

  • NHK 100分de名著の方で語られている部分は基本的に省略。
  • p54 時間に対する感覚。
    • 過去と未来に分けられていなく、同時に発生する(既に発生している?)的な感覚。フロランテとアラディンが会話する声を聞くことで、この二人の過去の同時性が現れる的な感じか。
    • gitのブランチがマージされるときの図みたいなものを頭に思い浮かべて、これが繋がっていることこそ同時性なのだ、みたいな解釈をしているが、あってるのだろうか…。
    • そしてこれは「同じフィリピン人」みたいな感覚がないことと対応しているらしい。確かにそんな気がする。
  • p60 新聞は、暦上のある時点(1日とかの期間)においてそれが売られる市場内で、誰かは知らないが確実に存在している人々の間で読まれ、誰かは知らないが確実に存在している同胞を想像させる。礼拝代わりに頭蓋骨のなかで行われるセレモニー。
  • p138 奴隷制が残らなかったのは、初期のヨーロッパナショナリズムが、◯◯人全体(◯◯語の話者と読者すべて)を国民と見なし、その結果農奴制の解体や民衆教育の推進、参政権の拡大などを求めたから。
  • p144以前は統治者の領土にナショナリティ的な概念はなかった、的な話がわかりやすくまとまっている
  • P197 クレオール役人の出世だけでなく学校についても中央を目指す巡礼となっている!
  • p219 ラジオなど、文字だけでなく音声のようなコミュニケーション手段によってもナショナリズムを生み出せるようになった。その結果、単一の出版語に依存しないナショナリズムの誕生の例も存在するようになった。
  • p282〜 人口調査で人種を恣意的に分類すること、俯瞰的な地図上で概念上の国境を生み出すことは、最初は現実を反映していない虚のものだったものが、次第に教育によってそっちが真実として想像されるようになっていく。博物館(歴史)も似たような効果を持つ。国民的アイデンティティを表す強力な記号として機能する(例えば国境による国の輪郭があらゆる印刷物に転写され世に出回り、強力な記号として機能するようになる)。
  • p325 死者の代弁により歴史を作り出している。p329イギリス建国の父は英語を話さなかったが、それは教えられていない。しかしそれはコントロールしてそうしたものではない。今や世代が変わりみな深いレベルで自然にそう思っている。

to where?

  • 時間に対する感覚が変わったというところは、時間の比較社会学とも通じるところがある。このあたりは特に気になるところなので、他の本も読みたい。