感想
- ふむふむという感じで読んだ。交換様式論もわかりやすく具体例ありで説明されていて、理解が深まって良かった。
- 憲法に関する基礎的な成り立ちみたいなのは、前半2章で終了。後半2章はより大きな話をしている感じだった。
- メモらなかったが、ヘゲモニー国家が存在するときに自由主義になり、存在しなくなると重商主義になるというあたりも面白かった。新自由主義と重商主義の同型性のあたり。
- 歴史はn年周期になっている、的な論はちょくちょく見かける(以前読んだ『100年予測』にもあった)が、正直あまりピンとこない。たまたまでは?と思ってしまう。世代がk個変わるとこう変わるから30*k年周期、みたいな理屈だったらまぁわかるが・・・。
ピックアップメモ
- p19
人は通常、倫理的な要求が最初にあり、欲動の断念がその結果として生まれると考えがちである。しかしそれでは、倫理性の由来が不明なままである。実際にはその反対に進行するように思われる。最初の欲動の断念は、外部の力によって強制されたものであり、欲動の断念が初めて倫理性を生み出し、これが良心というかたちで表現され、欲動の断念をさらに求めるのである。(「マゾヒズムの経済論的問題」『フロイト全集18』岩波書店)
フロイトのこの見方は、憲法九条が外部の力、すなわち、占領軍の司令によって生まれたにもかかわらず、日本人の無意識に深く定着した過程を見事に説明するものです。先ず外部の力による戦争(攻撃性)の断念があり、それが良心(超自我)を生み出し、さらに、それが戦争の断念を一層求めることになったのです。
憲法九条は自発的な意志によってできたのではない。外部からの押しつけによるものです。しかしだからこそ、それはその後に、深く定着した。それは、もし人々の「意識」あるいは「自由意志」によるのであれば成立しなかったし、たとえ成立してもとうに廃棄されていたでしょう
興味深い。強く信奉してしまうようになるプロセスとして、外部からの強制という形があり得るのか。
- p40 イラク戦争の話
派遣された自衛隊は平和維持活動しかしていなかったのですが、今回は、現地の人たちのほうがそうは考えなかった。ゆえに、現地で、彼らは敵意に囲まれたのです。長く秘されていたことですが、帰国後に五十四名の自衛隊員が自殺したのは、そのためでしょう。
知らなかった。
- p42
マッカーサーはそれまで猛威をふるってきた天皇制ファシズムを根絶しようとしたのですが、天皇制そのものは残そうとした。なぜなら、米国の占領に対抗する者は、それを天皇の名の下に行うにきまっているからです。そして、このような判断は、日本で政治的実験をもった者が歴史的にくりかえしてきたことです。
徳川家康もそうだし、その後の明治維新の時もそう。
それ以前もそう。
- p71
徳川の体制はまさに秀吉の朝鮮侵略を頂点とする四○○年に及ぶ戦乱の時代のあと、つまり「戦後」の体制なのです。ふりかえると、徳川の体制は、さまざまな点で、第二次大戦後の日本の体制と類似する点があります。
第一に、象徴天皇制です。
・・・
第二に、全般的な非軍事化です。
徳川幕府が先行形態である。
- p128
私はこのような贈与を純粋贈与と呼びます。右の頬を打たれたとき、左の頬を出すのは、見たところ、無力の極みです。しかし、ここには、互酬交換の力を越えるような、純粋贈与の力があるのです。「愛の力」といってもいいのですが、それは単なる観念ではなく、リアルで唯物論的な根拠をもつのです。
・・・
したがって、九条における戦争の放棄は、国際社会に向けられた「贈与」なのです。
from where?
to where?
- ひとまず満足したのでなし。