どんな本?
- 六本木ヒルズ等を手掛けた森ビルの実質創業者が書いた、都市論
感想
- 目先の利益にとらわれず、信念を持って(理想を掲げて)都市を作り上げていく様子は、圧巻だった。
- 大学時代に江副浩正に対してp104「「それが男子一生の仕事かよ」と憎まれ口を叩いたような覚えがある」とあるが、確かに「男子一生の仕事」と胸を張れる仕事と言えそう。
- 自分は世の中をこう変えたい!みたいな熱意を持ったことがないしなかなかこういう生き方をしたいとは思わないが、それでもこういう "大きな仕事" が世の中にはあるんだと思うと、ちょっと羨ましくはある。就活生が "大きな仕事" をしたいから総合商社に入る・・・みたいなのも大いに理解できる。
- 六本木ヒルズに今後出勤することになるからこの本を読んだのだが、六本木ヒルズはそこに住みそこで働く人に向けて設計されているということが序盤でわかってしまったので、なんじゃい!となった。
- でもまぁ、知識が増えて六本木ヒルズを楽しく散策できるようにはなったとは思うので、楽しみ。
メモ
- p32
- 六本木ヒルズは住む者のための都市であり、通勤のための都市ではない
- p44
- p66, p197
- 実際のところ、縦に伸ばして空間をうまく活かした場合にどの程度の人数がその都市で働き生活することができるんだろう?
- 面積は都心からの距離の二乗に比例して拡大していく(それゆえ体積も距離の二乗に比例して拡大していく)が、垂直方向に伸ばしても体積は定数倍にしかならないので、収容人数には限界がありそう。
- 職住を分離する場合は、都心からの距離に応じて貧富の差がグラデーションになりそうだが、職住近接の都市があると、そこに住める人とそうでない人の間で明確な格差というか壁が発生しそうなイメージがある。
- あと、日本人が住めるのだろうか?
- 「欧州の諸都市も職住近接だった」とあるが、実際どうなんだろう?ニューヨークとかはそんなイメージあるか。
- 実際のところ、縦に伸ばして空間をうまく活かした場合にどの程度の人数がその都市で働き生活することができるんだろう?
- p93
- p140, p142
- 「都市再開発法は、三分の二の賛成で再開発組合が設立されたら、組合が自ら事業の推進権を持ち、権利変換に進むことができると定めている。権利変換によって従前の資産は自動的に再開発後の建物に移り、明け渡さない場合は自動的に不法占拠となる。」「当時はこの法律の本当の凄さを行政も住民もわからなかった。私自身も、実際に実行してみるまで十分理解していなかった。」
- 「ちなみに、六本木地区の「崖下」と呼ばれていた谷町は、不良住宅の密集地区の改良を目的とした住宅地区改良法の適用地区調査が行われた地区だった。行政も「せっかくできた都市再開発法を使って劣悪な居住環境を改善したい。そうすれば、この一帯に都市再開発法を適用する大義名分も立つ」と考えたのだろう。」
- 功利主義の見本のような文章。そりゃ功利主義を信奉しないことには、このようなプロジェクトをゴールまで導くことはできないだろうな。こういう方の尽力のおかげで今の自分たちは恵まれた環境で過ごすことができているという事実は忘れてはならない・・・。
- p176
- 「こうした都市構造は、危険で不便なだけではない。「都心で職住近接の暮らしを送りたい」と願う人たちの、都心に住む権利と機会を奪っている原因にもなっていることに気づいてほしい。」
- 流石に横暴すぎるというか、自分が正義だと思い込みすぎではないかと思うが、こういう方の尽力のおかげで(以下略)
- 「こうした都市構造は、危険で不便なだけではない。「都心で職住近接の暮らしを送りたい」と願う人たちの、都心に住む権利と機会を奪っている原因にもなっていることに気づいてほしい。」
- p177
- 「ちなみに私も、子どもや孫たちも超高層に住んでいるが、孫たちも性格的になんの問題もなく、健康に育っている。」
- 流石にここは、感情的で稚拙だと言わざるを得ない・・・。
- 「ちなみに私も、子どもや孫たちも超高層に住んでいるが、孫たちも性格的になんの問題もなく、健康に育っている。」
- p198
- 「東京という都市は、世界の企業やビジネスマンにどうも人気がない。(中略)「彼らを満足させるような環境を創り出さなければ、東京は世界都市にはなれない。」海外をめぐって痛切に感じたことだ」
- ということは、東京を世界の企業やビジネスマンがやってきて職住近接で過ごしたいと思えるような都市にしたいということか。
- どこに最も重きを置いているのか気になる。日本に住む人間の幸せなのか、日本人の幸せなのか、日本自体の世界における位置付けを高くすることなのか、自身のディベロッパーとしての自己実現なのか。
- のちに日本ではなく海外をメインでやろうかな・・・と揺れている的な描写があったので、自分の思う理想の都市を創り続けていられることが最も重要なのかもしれない。
from where?
- 2023年7月から六本木で働くので、六本木ヒルズの成り立ちについては知っておきたいと思い、読むことにした。
to where?
- 7月から六本木ヒルズで仕事がんばるぞ!